
ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE
Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One
2023年·映画·163分·★ 7.7
アクションスリラーアドベンチャー
あらすじ
イーサン・ハントがAI兵器「エンティティ」を巡る世界的陰謀に立ち向かう。断崖絶壁バイクスタントが話題。
AIレビュー
「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」は、シリーズ通算7作目にして、フランチャイズが本格的な「実存的危機」と向き合った転換点だ。「エンティティ」と呼ばれる自律型AIが世界中の情報インフラを掌握し始める——この設定は2023年のAI議論と奇妙なほど同期しており、娯楽作品を超えた問題提起として観客の胸に刺さる。
クリストファー・マッカリー監督とトム・クルーズのコンビは「ローグ・ネイション」から築き上げてきた作劇のリズムと身体性への信頼をさらに進化させた。本作最大の見せ場は後半の断崖絶壁からのバイクスタント——この撮影のためにトム・クルーズは2年間にわたってバイクとスカイダイビングの訓練を積んだ。脊椎への負担が想定される撮影を何度も繰り返した映像は、現代映画におけるスタント哲学の極致を示している。「なぜCGIを使わないのか」という問いへの答えが全身で語られている。
物語の構造も巧みだ。「鍵」というマクガフィンを追いながら、実は物語の本当の核心は「AIの時代に人間の直感と選択がいかなる価値を持つか」という問いだと気づかされる。エンティティは過去のデータからあらゆる未来を計算できるが、イーサンの行動だけは予測不能——なぜなら彼は「計算上あり得ない選択」を繰り返すからだ。これは「人間の非合理性こそが機械に対する唯一の強み」というテーゼを、アクション映画の文法で表現した試みだ。
ヘイリー・アトウェル演じる新キャラクターのグレースは本シリーズに新鮮な風を吹き込む。スリや詐欺を生業とする彼女とイーサンの凸凹コンビは化学反応を起こし、「ルーキーと師匠」という古典的な関係性に現代的な緊張感を加えている。イーサンがグレースに何かを「伝えようとする」場面の演技の積み重ねが、後半に感情的な意味を持つ。
ベニス、アブダビ、ローマ、アラビア砂漠、列車という多様なロケーションが織りなすスペクタクルは2時間43分を感じさせない。終盤の列車上での追いかけっこは、CGIを使わない原則のもとで実現した物理的バトルとして圧倒的な迫力を持つ。ロケーションの多様性と各シーンの独自性は「見続けたい」という視覚的欲求を持続させる。
類似作品との比較:シリーズ内では「フォールアウト」(6作目)との比較が多い。両作品ともマッカリー監督作であり、「フォールアウト」の方が単作としての完成度は高いという評もある。本作はPart Twoへの前半として見た時に最大の意味を持つ。
視聴ガイド:シリーズ未見の方は「フォールアウト」(6作目)から入るのが理想。本作単体でも楽しめるが、レベッカ・ファーガソンとの関係性など感情的な文脈はシリーズを通して積み上げられたもの。字幕・吹替どちらでも楽しめる。大画面推奨。
総合評価:実写スタントの限界に挑む映画体験として強く推薦する。AI時代への不安を娯楽として消化したい人、アクション映画のリアリズム哲学に関心のある人に特に。Part Twoへの期待を高める傑作だ。
こういう人におすすめ:シリーズ未見の方は「フォールアウト」(6作目)から入るのが理想だが、本作単体でも十分楽しめる。AI時代への不安を娯楽として消化したい人、実写スタントの限界に挑む映画体験が好きな人に。2025年公開予定のPart Twoへの期待を高めてくれる傑作で、シリーズの集大成的位置づけになる予定だ。
2年間の準備、200フィートの断崖からのバイクスタント、本物の列車の上での撮影——これらの事実は映画の感動ではなく、映画を作る人間の意志の物語でもある。「なぜわざわざ危険を冒してリアルにこだわるのか」の答えが、スクリーンを見れば分かる作品だ。
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