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哀れなるものたち

Poor Things

2023·映画·141·8.1
ファンタジーコメディドラマ

あらすじ

自殺した若い女性の脳に胎児の脳を移植し蘇生させた科学者ゴッドウィン。「ベラ」と名付けられた彼女は成人の体に子供の精神を持ち、世界を探索しながら急速に成長していく。ヨルゴス・ランティモス監督が手がけたヴィクトリア朝ファンタジー。第96回アカデミー賞で4部門受賞。

AIレビュー

ヨルゴス・ランティモス監督の「哀れなるものたち」(2023年)は、映画史に残る奇作だ。アカデミー賞主演女優賞をはじめ4部門を受賞し、エマ・ストーンが完全燃焼した演技を見せるこの映画は、「フランケンシュタイン」のテーマをフェミニスト寓話として再解釈した野心作でもある。 物語の核心は「ベラ・バクスター」という存在だ。自殺した女性の体に、胎児の脳を移植することで生み出されたベラ(エマ・ストーン)。彼女は幼児の意識を持ちながら成人女性の体で世界を認識していく。自分の体を自由に動かすことを学び、言語を習得し、性行為を発見し、世界の不平等を理解していく——ベラの成長は「人間とは何か」を問い直す哲学的旅だ。 エマ・ストーンの演技は映画史に刻まれる。最初の幼児的な動き方と話し方から、世界を理解した後の精神的成熟まで、同じ体の中で全く異なる人間を演じ切る。特に前半、ぎこちなく走る姿やたどたどしい発音——「作られた不自然さ」が自然に見える演技は稀だ。 映像世界は完全なファンタジーだ。19世紀ヴィクトリア朝風でありながら実在しないロンドン。魚眼レンズによる独特のカメラワーク。彩度が低いモノクロから、ベラの意識が開くにつれて色彩が爆発するカラー映像への移行——この視覚的変化がベラの内面的成長と完全にリンクしている。衣装デザインのホリー・ワデルが生み出した衣装は、その奇抜さで映画の世界観を完成させる。ゴドウィン博士の屋敷のセットひとつひとつに、生と実験とグロテスクの美学が宿っている。 ランティモスの映画は常に不快感と笑いが混在する。「聖なる鹿殺し」「女王陛下のお気に入り」でも同じトーンが流れているが、本作はその中で最も「解放的」だ。ベラが性、快楽、自由を躊躇なく探求する姿は、従来の「女性の解放物語」が持ちがちな自己検閲を一切排除している。これを挑発と見るか、正直さと見るかで鑑賞体験は大きく変わる。 ウィリアム・デフォー演じる狂人科学者ゴドウィン博士と、マーク・ラファロ演じる誘惑者ダンカンも印象的だ。どちらもベラの「自由」に対して異なる形で反応し、社会がいかに「自由な女性」を制御しようとするかを体現する。 「フランケンシュタイン」を女性視点で読み直した作品として、フェミニスト哲学の映像化として、この映画は複数の文脈で読める。どの文脈でも「これは問題作だ」と「これは傑作だ」が同時に成立する——それがランティモス映画の特徴だ。成人向け推奨。上映時間141分。Disney+またはU-NEXTで視聴可能(日本)。 ヨルゴス・ランティモスはギリシャ出身で、「ロブスター」「殺しの烙印」でも「奇妙な社会規範」をジャンルレスに描いてきた。彼の映画の共通点は「観客を不快にさせることをためらわない誠実さ」だ。「哀れなるものたち」は彼の英語作品の中で最も商業的に成功した作品だが、その商業的成功がアーティスティックな妥協によってではなく、さらに過激な表現によって達成されたことが興味深い。ウィリアム・デフォーは本作でゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされ、マーク・ラファロも誘惑者としての「どこか滑稽な悪役」を体現した。主演3人のアンサンブルが映画の複雑さを支えている。 **視聴ガイド**: サスペンス好きはもちろん、韓国映画の文脈を理解したい人にも必見の一作。監督パク・チャヌクの独特の美学と、暴力と倫理をめぐる哲学的問いかけが融合した本作は、単なる復讐劇を超えた深い余韻を残す。衝撃的な結末は複数回の鑑賞で新たな発見をもたらす。 ランティモス監督の美学は「見て不快なものを美しく描く」点にある。本作でも残酷な手術シーンや性描写が芸術的な映像美の中に包まれており、倫理的な問いを観客に投げかけ続ける。ヴェネチア映画祭金獅子賞受賞作。

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