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関心領域
The Zone of Interest
2023年·映画·105分·★ 7.5
ドラマ歴史
あらすじ
アウシュビッツ強制収容所の隣に建てられた邸宅で暮らすナチス将校ルドルフ・ヘスとその家族の日常を描く。壁一枚隔てた場所で行われる大量虐殺を、直接描写せずに「音」として伝える。ジョナサン・グレイザー監督。第96回アカデミー賞国際長編映画賞受賞。
AIレビュー
ジョナサン・グレイザー監督の「関心領域」(2023年)は、映画表現の限界に挑んだ前人未踏の作品だ。アウシュビッツ強制収容所の隣に住むナチス高官ルドルフ・ヘスとその家族の日常を、ほぼ「日常映画」として描く。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞、アカデミー賞国際長編映画賞・音響賞受賞。
この映画に「見せない」という革命的な演出選択がある。収容所内の残虐行為は一切映らない。しかしそれは存在する——壁の向こうから聞こえる銃声、叫び声、焼却炉の煙が、ヘス家の庭での子供たちの笑い声と重なる。観客は「見えないもの」を脳内で補完し、その補完行為自体が最大の恐怖を生み出す。従来のホロコースト映画が「見せることで感情を引き出す」のに対し、本作は「見せないことで恐怖を増幅する」。
マーティン・デュビックが手がけた音響設計が映画の核心を担う。壁の向こうから聞こえ続ける低い轟音と断片的な叫び声——これは音楽ではなく、地獄の「音景色」だ。ミカ・レヴィの音楽は映画の最初と最後にのみ登場し、それ以外はこの「現実の音」が映画を満たす。アカデミー音響賞は当然の受賞だった。良いサウンドシステムで見ることを強く推奨したい。
ヘス家の描写は意図的に「普通」だ。妻は美しい庭のガーデニングに熱中し、子供たちは川で泳ぎ、ヘス自身は昇進を考える。家族はどこにでもいる中産階級のように見える。しかし彼らの「普通の幸せ」が、壁の向こうの大虐殺の上に成立していることを観客は知っている。この構造が、「悪の凡庸さ」——ハンナ・アーレントの概念——を映像で体現する。普通の人間が大虐殺の管理者として機能できるという恐怖は、歴史的事実の最も不快な教訓だ。
映画が提示する問いは現代に向いている。「関心領域」とは軍事用語で、収容所の管理区域を意味する。しかしグレイザーは問いかける——私たちも今、「見えないところで起きている苦しみ」に目を向けないことで、同じ構造の中にいるのではないか、と。映画は過去の物語として閉じることを意図的に拒否する。
この映画を「悲しい映画」として見るのは誤りだ。感情移入の余地をほとんど与えず、観客を「目撃者」として突き放す構造は意図的だ。観終わった後の不快感と問いが、この映画の本当の効果だ。見やすい映画では絶対にないが、映画という媒体の可能性の限界を試した作品として映画史に刻まれる。
おすすめ視聴者:映画の可能性を広げる実験的作品に関心がある人、歴史の暗部と現代の関係を考えたい人。上映時間105分。U-NEXTで視聴可能(日本)。
グレイザー監督は本作でカンヌ審査員賞を受賞した際のスピーチで、イスラエルとパレスチナの状況に触れた。これは「関心領域」が持つ「歴史的事件の映画」を超えた現代性を、監督自身が認識していることを示す。映画は「ナチスドイツ」というスペシフィックな悪を描きながら、「占領と安穏が同居する状況」を普遍的に問いかける。このポリティカルな側面を含めて作品を受け取ることで、映画の力と限界、そしてアートの社会的役割について考えさせられる。ドキュメンタリーではなく、フィクションという形式を選んだことで、「見ていた者の感情的な経験」を中心に据えられた。
**視聴ガイド**: 全16話(2部構成)というコンパクトな構成で完結するため、一気見に適している。韓国のロマンスドラマに慣れていない視聴者でも入りやすく、普遍的な感情を丁寧に描いた本作は、ジャンルを超えて多くの人の心に響くだろう。
アウシュビッツ収容所の「隣に住む人々」の視点で描かれた本作は、悪の陳腐さを映像で表現した唯一無二の作品。音と沈黙の使い方が卓越しており、カンヌ映画祭グランプリを受賞した現代映画史の問題作である。
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ホロコーストアカデミー賞実験映画悪の凡庸さ音響





