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13th: 憲法修正第13条

2016

13th: 憲法修正第13条

13th

2016·映画·100·8.2

あらすじ

アメリカ合衆国憲法修正第13条(奴隷制の廃止を定めた条文)が内包する「例外条項」を起点に、南北戦争後から現代に至るまでの米国における人種差別と大量投獄の歴史を追う政治的ドキュメンタリー。監督は『セルマ』のエヴァ・デュヴァーネイ。

AIレビュー

「奴隷制はアメリカ合衆国内において廃止される。ただし犯罪に対する刑罰を除いて——」。憲法修正第13条のこの例外条項が、南北戦争後のアメリカで何を生み出したのか。エヴァ・デュヴァーネイ監督は、この1文の重さを起点に、150年にわたる人種的抑圧の連鎖を鮮烈に描き出す。 本作の最も強烈な論点は、「犯罪者化」という手法だ。奴隷制廃止後、南部の農園主たちは元奴隷たちを些細な罪で逮捕し、囚人として農場で働かせることで事実上の奴隷制を復活させた。その後もジム・クロウ法、公民権運動への弾圧、1970年代のウォー・オン・ドラッグス(麻薬との戦争)、そして1990年代のスリー・ストライクス法——時代ごとに形を変えながら、黒人男性を刑務所に送り込む制度的な仕組みが維持されてきた歴史を、圧倒的な情報量で提示する。 インタビューに登場する学者、活動家、元受刑者、政治家たちの証言は多様で、時に互いに矛盾する。デュヴァーネイはそれを一つの「答え」に収束させるのではなく、複雑さを複雑なまま提示する誠実さを持っている。共和党政治家がいかにして「法と秩序」を選挙戦略として使ったか、民主党政権がいかに刑事司法の強硬化に加担したか——党派を超えた批判的視点が本作を単なるプロパガンダではなく、本格的な歴史分析たらしめている。 数字が語ることも重要だ。アメリカの収監率は世界最高水準で、黒人男性の収監率は白人男性の5倍以上に上る。人口の4.4%しかいないアメリカが、世界の囚人の約20%を収容するという現実は、システムが意図せず生み出した結果ではなく、設計の産物だという本作の主張を強く支持する。民間刑務所産業の存在——囚人数が増えるほど収益が上がるビジネスモデル——が、この構造を固定化させてきた点も丁寧に掘り下げられている。 Netflixオリジナル作品として公開された本作は、2020年のジョージ・フロイド殺害事件後に再び注目を集め、Netflixが無料公開する措置を取った。それ自体が本作の論点——メディアと社会変革の関係——を体現する出来事だった。本作を観ることが、社会への理解を深める行為として社会的に推奨された瞬間は、ドキュメンタリーの力の証明でもあった。 知的誠実さと情熱的な訴えかけを両立させた、近年のドキュメンタリーの中で最も重要な作品のひとつ。アメリカを理解しようとする全ての人が観るべき98分だ。日本にも無縁ではない——制度的差別という問いは、どの社会にも適用できる視点を本作は与えてくれる。政治、歴史、社会正義に関心を持つ人のみならず、現代の世界を知ろうとする全ての人への推薦作だ。 本作で特に印象的なのは、「ALEC(美国立法交流評議会)」という組織の露出だ。民間刑務所産業と保守系立法者を結ぶロビー組織が、厳罰化法案の立案に直接関与してきた経緯を示す部分は、民主主義の死角を鮮烈に照らす。数字も重要だ——アメリカの収監率は世界最高水準で、黒人男性の収監率は白人男性の5倍以上に上る。この現実は偶然ではなく、設計の産物だという本作の主張を支持する。 アメリカの刑事司法改革は本作の公開後も続いており、2020年のBlack Lives Matter運動はこの問題を再び世界の議題に押し上げた。本作はその運動の思想的背景を理解するための必読書的映像資料でもある。歴史、政治、人種問題に関心を持つ全ての人に、最初に観るべき政治ドキュメンタリーの一つとして推薦できる。 このドキュメンタリーが訴えるメッセージは、制作から10年以上経った今も色褪せない。アメリカの刑事司法制度における人種的不平等は依然として現在進行形の問題であり、本作はその告発文書として国際的な影響力を持ち続けている。ベルリン国際映画祭でのドキュメンタリー賞受賞をはじめ、多くの批評家賞を獲得した本作は、社会派映像作品の最高峰として記憶されるべき一本だ。

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タグ

社会問題人種差別政治歴史アメリカ

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