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イット・フォローズ
2014
AIレビュー
「何かが君を追いかけてくる。顔も声も変えながら、でも必ずそこにいる。そして決して止まらない」——「イット・フォローズ」(It Follows、2014年)が提示するこのホラーの前提は、シンプルで古典的でありながら、見た後に忘れることができない。デヴィッド・ロバート・ミッチェルが監督したこの作品は、ホラーというジャンルの枠組みを使いながら、性と死と青年期という普遍的なテーマを静かに抉る。
主人公のジェイ(マイカ・モンロー)は、デートの後に性行為を経た翌朝、「何かに追われている」ことを告げられる。その「何か」は人間の姿を模して、ゆっくりと、でも絶え間なく近づいてくる。逃げることはできるが、追跡は止まらない。この「呪いの伝播」という設定は、性感染という現実の恐怖のメタファーとして機能すると同時に、より広い意味での「避けられない何か」——死、青年期の終わり、過去の選択の結果——の比喩として読める。
映像スタイルが傑作だ。1980年代のホラー映画への敬意を感じさせるシネマスコープのフレーム、ジョン・カーペンターを彷彿とさせるシンセサイザー音楽、そして「何かが近づいてくる」という状況を最大限に活かしたロングショットの多用。「追いかけてくる存在」が遠方にひとつの点として映り込む演出は、それが何であるかわからない段階から、観客に「知覚の不安」を植え付ける。
ミッチェルは時代設定を意図的に曖昧にしている。スマートフォンが登場する一方、ブラウン管テレビが使われ、車は古い型だ。この時代の混合は「この物語がいつの話か」というリアリティの錨を外すことで、ホラーを特定の時代のものではなく、「常に起きうること」として位置づける効果を持つ。
主人公たちの関係性も丁寧だ。ジェイとその友人たちは、典型的なホラー映画の「ステレオタイプ」に収まらず、不安と友情が混在する等身大の若者として描かれる。恐怖に対して「一緒に立ち向かう」という選択が持つ感情的な重さは、スラッシャー映画には出せない種類の温かさだ。
こういう人に見てほしい。ジャンプスケアではなく、じわじわとした恐怖の積み重ねが好きな人。ホラーに「意味」を求める人、映画の言語(カメラワーク、音楽、編集)に敏感な人。ホラー映画のファンが近年の傑作を探しているなら、本作は必見だ。
類似作品:A24配給の「へレディタリー」「ウィッチ」「ミッドサマー」などのアートハウスホラーと同系統。ジョン・カーペンターの「ハロウィン」「ザ・フォッグ」へのオマージュも感じられる。
視聴ガイド:Amazon Prime Video等で配信。上映時間は100分。夜、ひとりで見ることを推奨する(恐怖の効果が上がる)。字幕版推奨。総合評価——ジャンルへの知識と愛情で作られた、ホラー映画の洗練された傑作。
「イット・フォローズ」の音楽を担当したディスアスタープライスのスコアは、本作の重要な構成要素だ。ジョン・カーペンターのシンセサイザーホラー音楽への明確なオマージュでありながら、単なる模倣ではない——デジタルとアナログが混在する、不安定な質感の音響が、「追いかけてくる存在」の不定形さと共鳴する。
この映画が「性感染のメタファー」として読まれることについて、ミッチェル監督自身は特定の解釈を否定している。しかしテキストとして成立している以上、「呪いが性行為によって伝播する」という設定が、性と死と責任の関係についての何らかの意識を反映しているという解釈は自然だ。この「意図されていないかもしれないが確かにある意味」の存在が、ホラーとしての恐怖を文化批評として変換する。
A24という配給会社が本作の北米配給を担当したことは、「アートハウスホラー」というジャンルの台頭と重なる。「ウィッチ」「ヘレディタリー」「ミッドサマー」などの後続作品へのつながりの中で、「イット・フォローズ」はそのジャンルの確立を準備した先駆的な作品として位置づけられている。
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ホラーゾクゾクする考えさせられる隠れた名作スリラー