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リンカーン

2012

リンカーン

Lincoln

2012·映画·150·7.4

あらすじ

南北戦争末期、エイブラハム・リンカーン大統領が憲法修正第13条(奴隷制廃止)の議会可決に向けて繰り広げた政治的闘争を描く歴史ドラマ。スピルバーグ監督、ダニエル・デイ=ルイス主演でアカデミー賞主演男優賞受賞。

AIレビュー

スティーブン・スピルバーグとダニエル・デイ=ルイスが組んだこの歴史劇は、アメリカの政治的理想主義とその現実的実践の間の緊張を、2時間半かけて精緻に描く。有名な南北戦争の戦場シーンではなく、議会の会議室と廊下に舞台を据えた本作の選択は、「歴史を作る」とはどういうことかについての本質的な洞察を映している。 ダニエル・デイ=ルイスのリンカーン像は映画史に残る偉業だ。彼が体現するリンカーンは、彫像的な偉人ではなく、疲れた目に深い知性を宿し、会議の合間に昔話を語り、息子の戦争参加をめぐって妻と激しく衝突する人間だ。有名な「高い声」の再現から、ゆっくりとした独特の歩き方まで、デイ=ルイスはリンカーンという人物を自分の体を通して再構築した。3度目のアカデミー主演男優賞は必然だった。 本作の核は、理念と政治の関係だ。奴隷制廃止という崇高な目的のために、リンカーンは汚職すれすれの取引——反対票を持つ民主党議員たちへの「人参」として政府ポストを約束する——を命じる。正義のために不正直さが必要になる瞬間の複雑さを、脚本のトニー・クシュナーは誠実に見つめている。「目的が手段を正当化するか」という問いへの回答を、本作は簡単に与えない。 トミー・リー・ジョーンズが演じる急進的共和党員タデウス・スティーブンスが本作のもう一人の核だ。黒人の完全な平等を信じながらも、戦略的に妥協する場面での複雑な心理描写は、映画の最も感情的な瞬間を生む。「理想と現実」の問いに対する彼の答えが、最後に明かされる場面の重みは大きい。 ジョン・ウィリアムズによる音楽は珍しく抑制的だ。スピルバーグの過去の歴史劇が音楽で感情を誘導しがちだったことと比べると、本作の音楽は控えめで、場面の意味を脚本と演技に委ねている。その選択が作品の知的誠実さを支えている。 政治ドラマとしてもヒューマンドラマとしても高い完成度を持つ本作は、「政治とは何か」という問いに向き合いたい全ての人に推薦できる。民主主義の理想と現実の乖離に苦しむ全ての時代に通じるテーマを、本作は1865年という特定の時代を通じて普遍化する。歴史劇として、政治ドラマとして、俳優映画として——三重の価値を持つ作品だ。 本作の脚本が描く「歴史的瞬間の前夜」という視点は、歴史映画の一つの理想を示している。結果が分かっている事件を描きながら、それでも「どうなるか」という緊張を維持できるのは、人物の動機と決断の描写が十分に深いからだ。憲法修正第13条が通過するかどうかを知りながら、それでも投票の場面が手に汗を握るものになるのはその証拠だ。デイ=ルイスは本作の後「ファントム・スレッド」(2017年)で再びオスカーを受賞し、その後俳優業から引退した。リンカーンは彼の代表作として永く記憶されるだろう。 政治、歴史、偉人伝に興味を持つ人への最高の推薦作だ。「理想主義と現実主義のどちらが正しいか」という問いを日頃考える人にとって、本作は映画的な最上の回答を提供している。 スティーヴン・スピルバーグとダニエル・デイ=ルイスが組んだこの作品は、歴史映画の枠を超えた政治ドラマとしての傑作だ。憲法修正第13条の成立という史実を、議会での票読みと政治的取引の生々しい描写を通じて描く脚本は、民主主義の本質と難しさを現代的視点で照らし出す。ダニエル・デイ=ルイスが体現したリンカーンの人間像は、偉人伝説ではなく悩み決断する政治家としての等身大の姿だ。長尺ではあるが、そのすべてのシーンに意味があり、最後まで緊張感を保った脚本トニー・クシュナーの仕事は特筆に値する。歴史の転換点において指導者がいかに決断するかを描いたこの映画は、現代のリーダーシップ論においても重要な参照点となっている。

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アメリカ史政治奴隷制廃止伝記南北戦争

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