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バベドック

2014

バベドック

The Babadook

2014·映画·6.8

あらすじ

夫を事故で失ったアメリア。7歳の息子サミュエルは「モンスターが来る」と怯え続けている。ある日、絵本「バベドック」を読み聞かせたことで奇怪な出来事が始まる。

AIレビュー

オーストラリアの新人監督ジェニファー・ケントが作ったこの映画は、ホラー映画の歴史において「比喩としてのモンスター」を最も完璧に機能させた作品の一つだ。公開から10年以上経った今でも「21世紀最高のホラー映画」リストに必ず名前が入る。 「バベドック」は絵本から現れるモンスターだが、この映画が本当に描いているのはグリーフ(悲嘆)だ。夫を突然失った母親が、その悲しみを処理できないまま息子を育てている。息子は問題児として学校で扱われ、母は睡眠不足と孤立に追い詰められている。この「日常の重さ」が映画前半を支配し、視聴者はホラー要素が始まる前にすでに「これは何か悪いことが起きるしかない」という絶望感の中に引き込まれる。 バベドックの造形は意図的にシンプルで古典的だ。黒いコートと長い爪と深い声。しかしその登場が「母親の精神状態」と連動して展開するため、観客は「本当に存在するのか」「母親の崩壊を見ているのか」という問いを最後まで持ち続ける。このアンビバレンスが映画に深みを与える。 エッシー・デイビスの演技が傑出している。愛する人を失った後の麻痺と怒りと罪悪感と倦怠が混在する演技は、ホラー映画史上最も「現実的な」主人公像を作り上げた。子どもを怖がるシーン、子どもに怒りをぶつけるシーン──これを見て「わかる」と感じた人が世界中にいる。愛情と憎しみが同居する親子関係の複雑さを、ホラーの言語で表現することに成功している。 映画のラストシーンの解釈は人によって異なる。「バベドックとの共存」という結論は、悲しみを消すことはできないが、その悲しみと共に生きることができるという成熟した認識として読める。 「バベドックは何なのか」という問いに対する映画の答えは、見た後にしばらく考えてほしい。悲しみとの共存という大人のテーマを、純粋なホラーの言語で語った傑作。 ジェニファー・ケント監督のデビュー作でありながら、本作は現代ホラーの傑作として即座に認められた。絵本の中の怪物という設定が、グリーフ(悲嘆)という感情そのものの擬人化であるという解釈は、ホラーというジャンルの可能性を大きく拡張した。エサ・デイヴィスの演技は、シングルマザーとしての疲弊と悲嘆が人間の精神に及ぼす影響を驚くほど説得力を持って表現している。 視覚的な演出においても、限られた予算を逆手に取った最小限の映像言語が、過剰なCGI依存の大作ホラーよりもはるかに大きな恐怖を生み出している。ババドックという存在が最終的に「消える」のではなく「共存する」という結末は、悲しみとは戦って克服するものではなく、付き合い続けるものだという真摯なメッセージを伝えている。母親の精神状態の悪化と子供の孤立という現代的な問題を、ホラーという形式を通じて普遍的なレベルで描いた本作は、ジャンル映画が持ちうる最大の深みを示した傑作だ。 この作品が持つ独自の視点は、同ジャンルの他作品と一線を画す要素となっている。物語の展開に伴い、登場人物たちの内面が丁寧に掘り下げられ、観客は彼らの喜びや苦しみを自分事として受け止めるようになる。こうした感情的な同一化こそが、映画体験を単なる娯楽から人生を豊かにする体験へと昇華させる鍵である。 映像表現の観点から見ると、本作は視覚的な語り口に特筆すべき工夫が凝らされている。カメラアングルや照明の使い方、色彩の選択が物語のトーンと見事に調和しており、視覚的な美しさが内容の深みを引き立てている。音楽も然りで、場面の感情を増幅させる役割を果たしながらも、決して過剰に主張することなく作品全体に溶け込んでいる。 この映画が今日もなお語り継がれる理由は、時代を超えたテーマの普遍性にある。人間関係の複雑さ、社会への問いかけ、個人の選択と結果といった主題は、どの時代の観客にも共鳴する。制作から年月が経過しても古さを感じさせない完成度は、本物の芸術作品が持つ証明でもある。

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心理ホラー悲嘆比喩母と子A24系

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